第2回 歯ブラシやフロスなど汚れを落とす行為はむし歯の予防効果が高くない?
1 むし歯はうつる感染症ではない 虫歯菌という特定の菌がいるわけではない
2 歯ブラシやフロスなど汚れを落とす行為はむし歯の予防効果が高くない
3 むし歯の治療方法(精密?)や材料(セラミックなど)でその後にむし歯が再発するかは明確な差がない
4 むし歯の取り残しは悪いわけではない むしろ状況次第で残すことが推奨されている
5 むし歯の予防はフッ化物(フッ素) フッ化物の使用方法は何でもよい訳じゃない
6 個人のむし歯のなりやすさの指標は過去のむし歯の経験(細菌検査などはエビデンスが低い)
7 定期クリーニングの直接的な虫歯予防効果は大きくない
8 むし歯の予防は自分が正しい知識をもって毎日の積み重ねを変えていくしかない
8回に分けて書きます
今回は第2弾 歯ブラシやフロスなどの汚れを落とす行為のむし歯の予防効果についてです。
結論から書くと歯ブラシやフロスや歯間ブラシなどの汚れを落とす行為のむし歯予防効果は高いとは言えません
ただ勘違いをしていただきたくないのは、歯磨きをしなくても良いということではないこと。歯ブラシなど汚れを落とす行為は重要ですがそれだけではむし歯の予防としては不足だということです。
FDI のむし歯の予防法の推奨度の高いものランキング
White Paper on Dental Caries Prevention and Management
https://www.fdiworlddental.org/sites/default/files/2020-11/2016-fdi_cpp-white_paper.pdf
1 フッ化物の応用
2 シーラント
3 唾液線刺激
4 食事のコントロール
5 抗菌薬
6 フッ素以外の再石灰化
注目すべきことは世界歯科医師連盟(FDI)のむし歯予防推奨度ランキングには 歯ブラシやフロス、歯間ブラシなど物理的に汚れなどを(プラーク含む)除去する方法が含まれていないことです。
しかしながら、歯ブラシなどプラークなどを除去する方法が無意味やしなくてもよいということではありません。
細菌が存在しない場所ではむし歯は発生しません。相対的にお口の中全体や歯に残されている細菌を減らすことは無駄な行為ではありません。(歯周病では大変重要です)
ところがお口の中で細菌が存在しない状況はあり得ません。歯ブラシで歯面のプラークが除去をされても無菌ではないですし、お口の中の他の場所から菌はすぐに戻ってしまいます。
さらに歯にはどうやっても物理的にプラークを除去できない場所が存在します。
小窩裂溝といい歯の噛む面などにある溝です。これは以下の画像のようになっており深く細い溝が存在して細菌を除去できません。
つまりどんなに磨いていても細菌が残っている場所があります。
『むし歯』という現象は、細菌がとれているかとれていないかという単純な要因だけでなくもっと複雑なバックグラウンドの結果として起きています。
個人のむし歯のなりやすさや、なりにくさもありそれも大変複雑な多数の要因で決まっています。
そして、それは不変のものではなく変化を起こします。
またの機会に記事でもむし歯のなりやすさを調べることができるか?についても書きますが単純ではないということだけ先に触れておきます。
現在わかっている効果的なむし歯の予防は適正なフッ化物の使用です。
現在一番効果があり安全であるむし歯予防法の歯磨き粉によるフッ化物の使用は過去記事のこちらから。
これらは、フッ素が○○に作用してとミクロの話が散見されますが、本質的には統計学的な手法で導き出されたマクロでの結果むし歯が予防されたという医学的にエビデンスの高い情報から成り立っています。
細菌を除去すればむし歯にならないという考え方は、ミクロであり複雑なむし歯に関わる多数の要因の一部の切り取りでしかありません。
最後に
過去に歯科医院などで、むし歯になるのは歯ブラシが足りないからや、うまくできていないからだ、お子さんのむし歯は親の仕上げ磨きが足りないからだ などと言われて傷ついた人もいるかもしれません。
むし歯は複雑な要因の結果ですし、歯ブラシによる予防効果は高いとは言えません。
もしかするとご本人の歯磨きは問題ない可能性もあります。
フッ化物の適正な使用と個人の特徴に合わせたむし歯予防法を提供できる医療でありたいと考えています。
不正確な情報で医療が患者さんを追い込むことがないようにしたいですね 過去記事