今後数回にかけて現在のむし歯についての世界的なスタンダードな考え方を解説していきます。
簡単にまとめを
1 むし歯はうつる感染症ではない 虫歯菌という特定の菌がいるわけではない
2 歯ブラシやフロスなど汚れを落とす行為はむし歯の予防効果が高くない
3 むし歯の治療方法(精密?)や材料(セラミックなど)でその後にむし歯が再発するかは明確な差がない
4 むし歯の取り残しは悪いわけではない むしろ状況次第で残すことが推奨されている
5 むし歯の予防はフッ化物(フッ素) フッ化物の使用方法は何でもよい訳じゃない
6 個人のむし歯のなりやすさの指標は過去のむし歯の経験(細菌検査などはエビデンスが低い)
7 定期クリーニングの直接的な虫歯予防効果は大きくない
8 むし歯の予防は自分が正しい知識をもって毎日の積み重ねを変えていくしかない
今回は第1回目として
1 むし歯はうつる感染症ではない 虫歯菌という特定の菌がいるわけではない
について解説をしていきます
これはWHOでも公式に表明しています。
※ https://japan-who.or.jp/factsheets/factsheets_type/sugars-and-dental-caries/
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/sugars-and-dental-caries
ネットやSNSを中心にうつることを乳幼児期に防げばむし歯を予防できるように発信されていることに懸念を感じたのか日本口腔衛生が学会も提言を出しました。
乳幼児期における親との食器共有について 2023.8.30
https://www.kokuhoken.or.jp/jsdh/statement/file/statement_20230901.pdf
食具の共有を避けることでのむし歯の予防効果はあまりない。むし歯の原因菌はミュータンスだけではない。
厚生労働省では以下のようにむし歯を説明しています。
むし歯は世界で最も多い疾患として知られており[1]、未治療のむし歯は日本でも多くの人に存在します。さらに近年は高齢者において、むし歯は増加しています[2]。むし歯は細菌が糖質をもとに作り出す酸が歯を溶かすことで生じます。唾液は酸を中性に近づけたり、溶けかけた歯を修復する役割を持ちます。多くのむし歯は歯の間や奥歯の溝から発生し、特に溝の細菌は歯磨きでは取り除けません。そのため歯磨きをしていればむし歯が防げるという常識は現在では正しくないことが分かっています。さらに生物医学的原因だけでなく、社会環境・生活環境の重要性が認識されつつあります。
※厚労省eヘルスネットより抜粋https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-02-001.html
現在むし歯は単一の菌もしくは特定の原因菌が引き起こすものではなくお口の中にたくさんいる複数の細菌がその人の生活環境や食事環境その他の複雑な要因によってその数や勢力図を変化させ,その結果複雑な組み合わせの中で継続的に歯が細菌が作り出す酸によって溶けている状況が出来ている状態である。
と考えられています。
これを生態学的プラーク仮説と言います。
※分かりやすくするため正確な表現ではありません。
まとめ
むし歯は特定の菌の存在により必ず引き起こされるものではなく誰でも口の中に存在する常在菌群の働きによるものである。
その常在菌群は常に同じ状態ではなく様々な要因によって変化をしていてその変化が結果として人間に良くない状況が継続的に続いてしまった結果である。この場合は口の中で細菌が生産する酸によって歯が解ける状況が続き歯が溶けてしまう状態。
感染すると言われている話の論拠はミュータンス菌のことを調べただけでありミュータンス菌がいない状態でもむし歯は発生することが確認されている。ミュータンスは誰でもいずれ早い段階で口の中に存在するものである。
つまりむし歯の予防としての食具などの共有をしないなど細菌感染などをしないようにすることの効果はかなり少ないということです。